相続対策としての生命保険のメリット・デメリット

相続対策として生命保険契約を勧められたことがある方もいるのではないでしょうか?

生命保険は確かに相続対策として有効です。ただ、使い方を間違えるとあまり意味のないもの、損をするものでもあります。

今回はそんな相続対策としての生命保険のメリットと注意点をまとめました。

相続における生命保険の基本

生命保険の種類

相続税対策に使われる生命保険は「死亡保険金」がある保険で、大別すると終身保険、定期保険、養老保険の3種類があります。 目的に応じて適したものを選びましょう。

終身保険

被保険者が亡くなるまで一生涯保障が続く保険です。相続税対策として最も活用しやすい保険です。

定期保険

保険契約時に決めた一定期間だけ死亡保障のある保険となります。 掛捨保険のため、保険料が比較的安価なことが多いという特徴がある一方、死亡する時期は誰にもわからないので相続対策としては活用しにくいです。

養老保険

貯蓄・運用目的で入られる方が多い保険です。保険契約時に決めた一定期間のみ保障がつき、期間満了後は死亡保険金と同額の満期保険金を受け取ることができます。

生命保険の三者の関係

生命保険は「契約者」「被保険者」「保険金受取人」の三者の関係で成り立ちます。

  • 契約者:保険料を支払う人
  • 被保険者:その保険の対象となる人
  • 保険金受取人:被保険者に支払事由(死亡、手術等)に該当する事柄が起きた際に保険金を受け取る人
  • 相続税の対象となるのは、保険料を負担する契約者と被保険者が被相続人で、かつ、保険金の受取人が妻や子などの法定相続人だった場合に適用となります。

    相続における生命保険のメリット

    非課税枠による節税効果

    生命保険の非課税枠は、法定相続人1人当たり500万円までとなります。

    例えば、配偶者と子供が2人いる場合は「500万円×3=1,500万円」までの生命保険金が非課税となります。1,500万円を超えた部分に対してのみ、相続税が課税されます。

    受取人指定による争族対策

    生命保険の保険金は受取人固有の財産となります。そのため、遺言書がない場合であっても、指定された受取人は他の相続人と話し合いをする必要なく、保険金を受け取ることができます。他の相続財産であれば、全相続人の承認がないと相続手続きができないので、そういう意味で言えば生命保険金は楽でいいです。

    さらに、ここが重要なのですが、受取人固有の財産なので、他の相続人から遺留分の請求をされることもありません。そのため、相続人が遺産を巡って骨肉の争いをする、「争族」を防ぐための使い方もできます。

    例えば相続人が2人兄弟で、相続財産が故人と兄家族が同居していた自宅しかない場合を想定してみましょう。 兄が自宅を相続した場合、弟は何も相続ができませんが、もし兄に対して自宅の評価額の半分の保険金の支払いがあった場合はどうでしょうか。

    この場合、兄は弟に対して自宅の評価額の半分の現預金を支払うことができ、遺産分割のバランスを取ることができます。
    ※この分割方法を代償分割と言います)

    弟が行使できる遺留分は相続財産である自宅の評価額の1/4となり、実際に弟が代償分割で取得する相続財産は全体の1/2となるため、遺留分の問題もクリアしています。
    ※生命保険金は遺留分の対象にならないので

    特に非上場株式や不動産など、すぐの換金が難しい財産がある場合、生命保険を活用した争族対策は必須と言えるかもしれません。

    相続における生命保険の注意点

    非課税枠は相続人のみ

    生命保険の非課税枠が使えるのは受取人が相続人に限定されています。

    例えば、亡くなられた方の相続人が妻・子A・子Bの3人である場合で、孫C(=子Aの子)を受取人としている生命保険は非課税枠が使えません。孫Cは相続人ではないからです。
    ※やっかいなことにこの場合、孫Cは「相続税額の2割加算」の対象となり、本来よりも1.2倍の相続税を納める必要があります

    また、相続放棄した方も上記の相続人には含まれないので、やはり非課税枠が使えません。十分ご注意ください。

    保険は基本的に加入者が損をする

    相続対策として多額の生命保険契約を結べばいいかと言えば、そんなこともありません。

    というのも、保険は基本的に加入者が損をするようにできているからです。保険で儲けるのは保険会社なので当然ですね。

    そのため、生命保険はあくまでも、①生命保険の非課税枠を使い節税する、②争族対策で特定の相続人に保険金を渡す、というどちらかの目的に合致しているときに契約するのがいいと思います。

    まとめ:困ったら相続につよい税理士に相談しましょう

    生命保険に限らず、相続対策は長い時間が必要、かつ失敗が許されないものとなります。

    判断が難しい内容については、早めに税理士に相談するのがいいと思います。

    札幌で相続に強い税理士なら是非、関口達也税理士事務所までご相談ください。問い合わせフォームからご連絡お待ちしております。