2024年7月、20年ぶりに新紙幣が発行されました。
新紙幣発行の目的は色々言われていますが、新紙幣発行で一番ドキドキしているのは、タンス預金の大量保有者ではないでしょうか。
このまま福沢諭吉を保有し続けるリスクは何なのか。
新紙幣発行の目的とともに解説していきます。

今回の動画をご視聴頂ければ、こちらの内容を理解できるようになります。

  • 新紙幣発行の目的3選
  • 税理士がタンス預金をおすすめしない理由

新紙幣発行の目的

新紙幣発行の目的
①偽造防止(+技術継承)
 偽造防止技術のアップデート
 高度印刷技術の継承
②キャッシュレス化の推進
 券売機・自販機・ATMの更新必要⇒現金扱いを縮小
③タンス預金の減少と把握
 タンス預金は日本全体で58兆円ほど
 発行後1年間で世の中の紙幣の6割は新紙幣へ
 20年前の紙幣交換でもタンス預金は一時的に減少

新紙幣が発行される目的はいくつかあります。
よく言われるのが、1つ目、偽造防止です。 最新の偽造防止技術を取り入れることにより、犯罪組織による偽札の流入を防ぎます。 まあこれはイメージしやすいと思います。

発行当初は最新技術であっても、20年とか経過すれば当時の技術なんて陳腐化しますからね。 今回はホログラムを3D対応にし、紙幣を傾けると肖像の顔の向きや模様が動いて見えるようになりました。

使う側としては、正直どうでもいいのですが、紙幣においては世界初の技術のようです。 偽造防止のための高度印刷技術の継承、も新紙幣発行の大きな目的の一つです。

新紙幣の発行は20年毎に行われていますが、これが10年に一度だと、自動販売機や券売機、ATMの対応がとてつもなく大変になります。 逆に30年に一度だと、紙幣の偽造防止技術の承継が難しくなります。

日本の紙幣には世界トップクラスの技術が使われているようですが、技術は技術者がいてからこそのもの。 承継する前に亡くなってしまうとその技術が失われてしまうので、20年に一度が適度とされています。

2つ目として、キャッシュレス化の推進もあります。 新紙幣がメインとなると、飲食店や交通機関の券売機、銀行のATM、自動販売機等、様々な業界で機器更新の必要性が生まれます。

機器更新できるキャッシュリッチ企業であれば、新紙幣対応のついでにキャッシュレスにも対応可能な機器に入れ替えるケースが増えます。 会社によっては、新紙幣発行を機会に現金の取り扱いをやめ、支払い手段をキャッシュレス決済のみに絞るところもでてきているようです。

ぼくの好きな某ラーメン屋も現金が使えなくなりました。 なにはともあれ、新紙幣発行により多少なりともキャッシュレス化の推進に寄与しているようです。

で、ここまでが日本銀行や国立印刷局による新紙幣発行の表向きの目的なのですが、税理士界隈では3つ目としてこんな目的もささやかれています。 家庭にあるタンス預金の減少と国税庁によるタンス預金の把握、です。

タンス預金というのは、各ご家庭で銀行の普通預金に預け入れしていない、各ご家庭で現金として保管しているお金のことです。 このタンス預金、日本全体で58兆円ほどあるとされています。 福沢諭吉さん、58万枚分です。

新紙幣が発行されると、発行後1年間で世の中の紙幣の6割が新紙幣になるとされています。 そうすると、この家庭に埋まっている58万枚の諭吉さんの所有者たちは、このまま諭吉さんのままでいいか、不安になります。

勿論、旧紙幣であっても問題なく使用できます。 40年前に諭吉さんに取って代わられた聖徳太子の1万円札、今でも使えます。 ただ、コンビニで聖徳太子の1万円札を出して、どんな目で見られるでしょうか。

ぶっちゃけ僕も見たことないので、コンビニの若い店員からは、あ、こいつ偽札だしてきたな、と思われてしまうかもしれません。 ということで、新紙幣が発行されると、旧紙幣のまま眠っているタンス預金に動きがでます。

タンス預金を諦めて銀行口座に預ける人、一度銀行で両替をする人、そのまま使ってしまう人、いずれにせよ、その動きを国税庁は把握することができるようになります。 なので、新紙幣発行の目的の一つにタンス預金の減少と把握というのは勿論あります。 実際、20年前の紙幣交換でもタンス預金は一時的に減少したというデータもあるようです。

タンス預金のデメリット

タンス預金のデメリット
■盗難・紛失リスク
 空き巣・強盗・災害
■インフレリスク
 タンス預金は運用できないので増えない
 インフレ率は今後2%前後が想定される
■使いにくい
 タンス預金の目的で多いのは脱税
 ⇒確かに少額ずつ使っていけばバレる可能性は低い
 ⇒但し、高額商品の購入や口座への入金時にバレる
 ⇒タンス預金のまま相続すると相続人が困る
 ⇒特に旧紙幣のタンス預金はやっかい

新紙幣発行の目的でタンス預金についてお話ししたので、タンス預金に対しての税理士のスタンスもお伝えいたします。 相続税申告の業務をしていると、亡くなられた方が銀行嫌いで、多額のタンス預金があるケースがあります。 はっきり言ってタンス預金はおすすめしていません。

タンス預金にはデメリットが多いからです。

一つ目が盗難・紛失リスクです。 空き巣などに入られたら一発アウトです。 特に自分以外にタンス預金の存在を知っている人がいる場合、例えそれが家族であっても要注意です。 人の口に戸は立てられません。 最近は強盗事件も増えているのでリスクの塊です。

ただ、そうは言っても、家族にタンス預金の存在を伝えないと、その他が急死した場合にタンス預金が発見されない可能性もでてきます。 ジレンマです。

火事が起きてた場合も悲惨です。 ウシジマくんも44巻で爆弾により倉庫いっぱいのタンス預金を失っています。 タンス預金がある限り、常にそうしたリスクを抱えることになってしまいます。

インフレリスクも無視できません。 当たり前ですが、タンス預金は運用できないので増えません。 ウシジマくんのように、現金でカウカウファイナンスを営めば別ですが、それは例外です。 今後インフレ率は年2%前後が想定されています。 複利計算でいくと、今の1000万円は30年後には1800万円の価値です。

銀行に預けているだけだとそんなに増えませんが、アメリカ国債やインデックス投資を継続できれば低リスクでもっと大きな価値にすることができます。 タンス預金で寝かしておくのはもったいないです。 タンス預金の使いにくさも見逃せません。

税理士目線で言えば、そもそもタンス預金をしたがる目的で多いのは脱税です。 銀行不審でタンス預金をしている方もいますが、税理士が耳にするのは脱税関連です。 脱税の良し悪しは一旦抜きにして考えてみましょう。

色んな脱税がありますが、例えばタンス預金であれば孫にそのまま渡すことで贈与税がかからないだとか、死亡したときにタンス預金なら税務署に見つからず相続税がかからないだとか、です。 タンス預金をどうやって作ったかは置いておいて、確かに相続人が少額ずつ使っていけばバレる可能性は低いです。 タンス預金5000万円相続したけど、毎月数万円ずつしか使わない、とかです。

ですが、そのタンス預金で高額商品を購入したり、普通預金に入金した瞬間税務署に把握されます。 脱税がバレます。

不動産購入は謄本に載るので当たり前ですが、車・貴金属購入も調べられれば一発です。 税務署の調査力をなめてはいけません。

高額商品も買えない、銀行口座に入れることもできないので、脱税によりタンス預金を手にした相続人は結構困ったことになります。 しかも、今回のように新紙幣が発行されるとよりやっかいです。

数年以内に旧紙幣は流通量が激減します。 流通量が激減した中で、何百万円もの旧紙幣を銀行に持っていけば、かなり目立ちます。 もちろん、出所確認もされます。 ということで、脱税の良し悪しは別としても、タンス預金はおすすめできません。

当たり前ですが、お金は使って初めて価値が生まれます。 自分が本当に欲しいものを購入する。 大切な人への贈り物を買う。 将来のために投資信託を買う。

ぼくもそうですが、是非皆さんも綺麗なお金の使い方をして頂ければと思います。