現金と不動産どちらが相続税対策に有利?

相続が発生した際、または将来に向けて生前対策を検討する際、多くの方が直面するのが「現金(預貯金)のまま遺すべきか、それとも不動産に変えて遺すべきか」という疑問です。

特に近年、札幌市内を中心に地価の大幅な変動が続いており、「うちも札幌で相続税の課税対象になるのではないか」「どのような対策が最も効果的なのか」と、札幌で相続税申告や生前対策に不安を感じている方が増えています。

結論から申し上げますと、税務上の「財産評価額を圧縮して税金を安くする」という観点だけで見れば、不動産のほうが圧倒的に有利になるケースが多いです。しかし、札幌・北海道特有の不動産事情や、遺産分割における「現金ならではの強み」を無視して不動産対策に偏ってしまうと、後々家族間で大きなトラブルに発展しかねません。

本記事では、札幌で多くの相続税トラブルを解決してきた札幌相続税相談室Giraffeが、現金と不動産の相続税評価の違い、札幌の市場を反映した具体的なシミュレーション、そして北海道特有の不動産相続リスクについて徹底解説します。

1. なぜ「不動産」は相続税対策に有利と言われるのか?仕組みを解説

相続税を計算する際、財産の種類によってその「価値(評価額)」の算定方法が大きく異なります。不動産が相続税対策に有利とされる最大の理由は、「時価(実際に売買される価格)」と「相続税評価額(税金の計算に使われる価格)」の間に大きなギャップ(乖離)があるからです。

現金(預貯金)の評価方法

現金や銀行の預貯金は、「100%」そのものの金額で評価されます。例えば、手元や口座に5,000万円の現金があれば、相続税評価額もそのまま5,000万円です。どれだけ工夫をしても、現金のままである限りその評価額を1円も下げることはできません。非常に明快ではありますが、税金対策という面では何のメリットもありません。

不動産の評価方法

一方で、不動産(土地・建物)の相続税評価額は、時価よりも大幅に低く見積もられる仕組みになっています。

  • 土地の評価:原則として国税庁が毎年7月に発表する「路線価」をベースに計算されます。この路線価は、時価(実勢価格)の約80%を目安に設定されています。つまり、購入した瞬間に評価額が2割引きになるようなものです。
  • 建物の評価:毎年市区町村から送られてくる「固定資産税評価額」がそのまま相続税評価額となります。これは実際の建築費用の約50%〜70%程度になることが一般的です。

つまり、現金5,000万円を使って不動産(土地や建物)を購入するだけで、相続税上の財産価値を自動的に20%〜50%近く引き下げることができるのです。これが不動産を活用した節税の基本原理です。

さらに評価を下げる「賃貸」と「特例」の仕組み

購入した不動産を自宅として使うだけでなく、第三者に貸し出す(賃貸アパートやマンション、貸し駐車場など)ことで、評価額はさらに下がります。「借地権」や「借家権」が考慮され、自分が自由に処分できない不自由さの分、評価額からさらに約30%(貸付用建物の一般的な控除率)などが差し引かれるためです。

さらに、亡くなった方の自宅や貸付用の土地については、一定の要件を満たすことで土地の評価額を最大80%減額できる「小規模宅地等の特例」という強力な制度が用意されています。

【国税庁が認める最大の節税枠】
条件に合致すれば、数千万円から1億円を超える土地であっても、その評価を最大8割カットできます。ただし、同居親族以外の相続人がこの特例を使うためには、いわゆる「家なき子特例」などの厳しい要件をクリアする必要があります。

土地や建物の評価額に占める割合が大きい札幌だからこそ、こうした特例の適否が札幌での相続税額を大きく左右します。特例の活用を検討される方は、事前に以下の関連記事もご確認ください。

▼関連記事はこちら
最強の相続税対策!?家なき子特例について
小規模宅地等の特例とは?最大80%減額をわかりやすく解説

2. 【具体例】札幌市内の不動産を活用した相続税対策シミュレーション

では、具体的に「現金」と「不動産」でどれほど相続税額に差が出るのか、札幌市中央区の物件を例に挙げて具体的な数値でシミュレーションしてみましょう。実際の税額の変化を見ると、その効果の大きさが一目瞭然です。

【家族構成・資産状況の前提条件】
・被相続人:父(札幌市在住)
・相続人:子ども2人(長男・次男)
・正味の遺産総額:1億円
・札幌での相続税基礎控除額:3,000万円 +(600万円 × 2人)= 4,200万円
・課税対象となる遺産額:1億円 − 4,200万円 = 5,800万円

パターンA:遺産1億円をすべて「現金」で遺した場合

財産がすべて現金の場合、評価額の圧縮はありませんので、5,800万円がそのまま課税対象になります。法定相続分(各2,900万円)で均等に分けたと仮定して相続税を計算します。

  • 各人の相続税額:2,900万円 × 税率15% − 控除額50万円 = 385万円
  • 相続税の納税総額:385万円 × 2人 = 770万円

すべてが現金の場合、子ども2人で合計770万円の相続税を支払う必要があります。

パターンB:現金1億円のうち、5,000万円で「札幌市中央区の賃貸マンション」を購入していた場合

生前に現金5,000万円を使い、札幌市中央区(地下鉄東西線沿線など需要の高いエリア)の賃貸マンションを1室購入し、第三者に賃貸していたとします。

このマンションの相続税評価額を計算すると、時価5,000万円に対して、構造や路線価を考慮した固定資産税評価額(土地+建物)が約2,500万円まで下がります。さらに、賃貸(貸家建付地・借家)としての評価減(約30%)が適用されるため、最終的な相続税評価額は約1,750万円まで圧縮されるケースが珍しくありません。

この場合の、相続税上の遺産総額は以下のようになります。

  • 残った現金:5,000万円
  • 購入した賃貸マンションの評価額:1,750万円
  • 相続税上の遺産総額:6,750万円

ここから基礎控除額(4,200万円)を引くと、課税対象となる遺産額は2,550万円まで減少します。同じように法定相続分(各1,275万円)で分けて税額を計算します。

  • 各人の相続税額:1,275万円 × 税率15% − 控除額50万円 = 141.25万円
  • 相続税の納税総額:141.25万円 × 2人 = 282.5万円

パターンAとパターンBの比較

  • すべて現金で遺した場合(パターンA):770万円
  • 一部を不動産に変えた場合(パターンB):282.5万円
  • 【差引節税効果】:487.5万円

このように、資産の一部を札幌市内の賃貸不動産に組み替えるだけで、子どもたちが将来負担する相続税を約487万円も軽減することが可能になります。

なお、近年こうした「不動産(特に高層マンション)の時価と評価額のギャップ」を利用した過度な節税スキームには、国税庁による法改正(いわゆるタワマン節税の規制)が入りました。札幌でもタワーマンションを活用した対策を検討中の方は、現在の法的な取り扱いについて以下の記事で詳しく解説しています。

▼関連記事はこちら
【2024年改正】タワマン節税の今~相続対策として有効!?~

3. 北海道・札幌特有の不動産相続リスクと「現金」の強み

上記のシミュレーションを見ると「じゃあ全部不動産に変えた方が得じゃないか!」と思われるかもしれませんが、ここに大きな落とし穴があります。特に北海道・札幌エリア特有の不動産事情を考慮すると、不動産の一本化には極めて高いリスクが伴います。

ここでは、不動産対策のデメリットと、逆に「現金」が持っている絶対的な強みについて解説します。

リスク①:札幌市内・北海道内における地価の「極端な二極化」

現在、札幌市中央区や北区の駅近、新幹線の延伸予定エリアなどは地価が大きく上昇していますが、駅から遠い郊外や、札幌近郊の地方都市(小樽・江別・岩見沢など)では、買い手がつかない「負動産(売れない空き家・土地)」化が進んでいます。

相続税の評価額上は「一定の価値がある」とみなされて税金がかかるにもかかわらず、いざ相続した後に「売却できない」「管理費や冬の除雪費用だけが毎年重くのしかかる」という事態に陥るリスクがあります。北海道の冬の維持費(除雪・暖房費・凍結防止対策など)は、他地域に比べて非常に重いコストになることを忘れてはなりません。

リスク②:遺産分割が難しく、親族間で揉めやすい(争続リスク)

現金は1円単位で綺麗に分けることができますが、不動産は物理的に切り分けることができません。例えば、先ほどの例で「遺産が札幌市内の実家(家と土地)5,000万円」と「現金5,000万円」だった場合、長男が実家を引き継ぎ、次男が現金を引き継げば一見公平に見えます。しかし、長男が「古い実家をもらっても自分は住まないし、解体費用や固定資産税がかかるから現金のほうが良かった」と不満を漏らし、遺産分割協議が泥沼化するケースが多発しています。不動産は「争族」の引き金になりやすい資産なのです。

リスク③:相続税の納税資金が足りなくなる

相続税は、原則として「相続開始を知った翌日から10ヶ月以内に、現金で一括納付」しなければなりません。良かれと思って手元の現金をすべて不動産に変えてしまうと、せっかく数千万円の節税に成功したとしても、「手元に税金を払う現金がない」という本末転倒な状況に陥ります。最悪の場合、納税のために引き継いだ不動産を急いで格安で手放すことになりかねません。

ですから、現金を残しつつ、生前に計画的に資産を次世代へ移す「生前贈与」などの対策を組み合わせることが不可欠です。生前贈与の正しい進め方や、税務調査で指摘を受けないための注意点については、こちらの記事をご参考ください。

▼関連記事はこちら
生前贈与で相続税を減らす方法|贈与税の基礎と失敗しない対策を税理士が解説

また、お子様やお孫様がこれから札幌市内で家を建てる・購入する予定がある場合は、現金を非課税で大きく動かせる特例もあります。あわせてチェックしておきましょう。

4. 現金と不動産のメリット・デメリット比較まとめ

これまでの内容を元に、現金と不動産のそれぞれの特徴を分かりやすく一覧表にまとめました。対策を講じる際の比較検討にご活用ください。

財産の種類 相続税対策(節税) 遺産分割のしやすさ 納税資金としての活用 札幌における特有のリスク
現金・預貯金 ❌ 評価減は一切なし(100%課税) ⭕️ 1円単位で綺麗に分割できる ⭕️ そのまま納税に使えるため最も安全 ⚠️ インフレによる資産価値低下のリスクがある
不動産(土地・建物) ⭕️ 時価より2〜5割評価を下げられる。特例で最大80%減も可能 ❌ 均等に分けるのが難しく、トラブルになりやすい ❌ 即座に現金化できず、納税には不向き ⚠️ エリア(郊外や地方)によっては売れない「負動産」になるリスク、冬の維持費負担

5. まとめ:札幌での最適な相続税対策は「バランス」がすべて

現金と不動産、どちらが相続税対策に有利かという問いに対する本当の答えは、「どちらか一方に偏らせず、それぞれの強みを活かした『黄金バランス』を保つこと」にあります。

不動産を活用して相続税の評価額を安全な範囲で圧縮しつつ、残された家族が遺産分割で揉めないため、そして税務署への納税に困らないための「現金」もしっかりと手元に残しておく。これが、札幌相続税相談室Giraffeが推奨する最も確実な円満相続へのアプローチです。

特に札幌市内は、エリアや駅からの距離、また冬の積雪・除雪問題に伴う「戸建てからマンションへの需要シフト」など、地域特有の市場性を考慮した不動産評価や物件選びが求められます。一般的な税理士ではなく、札幌の相続税に強い税理士にシミュレーションを依頼することが、失敗しないための近道です。

当事務所では、登録者6万人を超える税理士YouTuberをはじめ、相続税申告と生前対策の経験豊富な相続税専門の税理士・司法書士が100%直接対応し、お客様の資産状況に合わせた最適なバランスをご提案しています。

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6. 関連記事まとめ

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