一次相続・二次相続について
相続における遺産分割は、一次相続と二次相続の相続税の合計額を一次相続時によく考えないと失敗してしまいます。一次相続とは両親のどちらか片方が亡くなり、配偶者と子が相続人になることを言います。二次相続とは、一次相続で相続人となった配偶者が亡くなり、相続人が子のみとなる相続を言います。
一次相続時に二次相続の相続税を考える必要があるのは、二次相続時には配偶者控除が使えず、また法定相続人の数も減少するため基礎控除額等が増加するためです。上記内容でいまいちピンとこない方は「二次相続で失敗しない、一次相続の納税対策」を参照ください。
税額控除について
相続税では各相続人に係る相続税を減らすことができる税額控除という制度があります。本来は6つあるのですが、外国税額控除は少し特殊なので省略いたします。
贈与税額控除
生前贈与加算により3年以内の贈与額を相続財産に加算された相続人は、贈与時に支払っている贈与税額がある場合は、相続税から控除することができます。相続税と贈与税で2重課税となるのを防ぐための措置です。
配偶者控除について
夫婦間の相続では、配偶者が取得する最低1億6000万円までの相続財産については相続税を課税しないこととなっています。これを相続税の配偶者控除といいます。
配偶者控除の正確な金額は、①1億6000万円、②全相続財産の法定相続分、のうち大きい金額となります。②の法定相続分とは、子が相続人の場合は配偶者は1/2、両親が相続人の場合は配偶者は2/3、兄弟姉妹が相続人の場合は配偶者は3/4と定められています。そのため、全相続財産が5億円で妻・長男・長女が相続人である場合、配偶者控除の金額は1.6億円<2.5億円=2.5億円となります。
しかし、一見上限額まで使用したほうが得に見える配偶者控除ですが、1次相続・2次相続のトータルで考えた場合には、上限額まで使用しないほうがいいケースが少なくありません。詳細は、「二次相続で失敗しない、一次相続の節税対策」を参照ください。
未成年者控除
相続人が未成年者である場合に活用できる税額控除です。控除できる金額は「10万円×(20▲相続人の相続時の年齢)」となります。
年齢の端数は切り捨てです。ですので、相続時に16歳5か月である場合は、「10万円×(20▲16)=40万円」の税額控除となります。
障害者控除
相続人が障害者である場合に活用できる税額控除です。控除できる金額は障害の程度により、下記の用意異なります。
相次相続控除
一度目の相続から10年以内に次の相続が発生した際に活用できる税額控除です。
2割加算について
相続財産を取得した者が配偶者又は一親等の血族(一親等の血族の代襲相続人含む)以外である場合、その者の相続税額にはその相続税額の2割に相当する金額が加算されることになります。これを2割加算といいます。
2割加算に該当しないのは、配偶者、両親、子とその代襲相続人です。孫を養子にしている場合は2割加算の対象となるため注意が必要です。
小規模宅地の特例
小規模宅地等の特例とは、亡くなられた方が住んでいた、又は事業をしていた土地や借地権について、一定の要件を満たす場合は相続税評価額の80%又は50%を減額するという特例措置です。土地は相続財産の大半を占めることが多い資産ですが、換金するのに時間がかかり、また居住地である場合、相続人の生活を保護する必要があるため取られている措置です。
例えば住んでいた家の土地が1億円の相続税評価額であった場合、要件に該当すれば80%の8000万円の減額を受けることができます。
節税対策を取るうえでは避けては通れない制度ですので、詳細は「小規模宅地について」を参照下さい。
遺留分とは
遺留分とは法定相続人に認められる最低限の遺産取得分を指します。遺言書により遺産の受け渡しを自由に決めることはできますが、相続人が最低限の遺産すら取得できないというケースを防ぐために、遺留分は遺言より優先されることが民法上明記されています。そのため、「愛人に全財産を遺贈する」という遺言書があった場合でも、相続人は遺留分侵害額請求により遺留分を取り戻すことができます。なお、遺留分は相続人のパターン毎に下記のようになっています。兄弟姉妹には遺留分が存在しないため注意が必要です。
相続人のパターン | 相続人の遺留分 |
---|---|
配偶者 | 1/2 |
配偶者+子 | 配偶者:1/2 子:1/4 |
配偶者+親 | 配偶者:2/6 親:1/6 |
配偶者+兄弟姉妹 | 配偶者:1/2 兄弟姉妹:なし |
子 | 子:1/2 |