相続税対策、相続手続、相続税申告をする中で理解していたほうがいい基本事項をご紹介します。専門家に依頼する際は、何となく内容を知っていると、コミュニケーションがより円滑に進むかもしれません。

被相続人、法定相続人とは

被相続人とは亡くなった方のことを指します。
法定相続人とは民法で定められた相続人のことを指し、配偶者(夫又は妻)と下記の優先順位の高い者のことを言います。

血族の種類
第一順位 子及びその代襲相続人
第二順位 直系尊属
第三順位 兄弟姉妹及びその代襲相続人

※代襲相続人とは相続人であるはずの子(若しくは兄弟姉妹)が亡くなっている場合などに、その者に代わって相続人となる者のことをいいます。
仮に被相続人に妻と長男・長女がいた場合、法定相続人は妻・長男・長女の3人を指します。

相続税の課税価格とは

相続税の計算をする際にはまず課税価格を求める必要があります。課税価格は、相続財産の合計額(通常の相続財産と、非課税枠を控除した生命保険・退職金の金額、相続時精算課税財産の価額、生前贈与加算をした後の金額)から債務・葬式費用の金額を控除した金額のことを指すと認識しておいてください。

生前贈与加算とは

生前贈与加算とは、死亡前3年以内にされていた相続人への贈与額が、相続税の課税価格に加算されるという規定です。余命短い中で慌てて配偶者や子へ贈与したけれども、生前贈与加算により全て相続財産に加算されてしまった、というような笑えない実例をよく目にします。お気を付けください。
ポイントとしては、対象が相続人に限定されていることです。つまり、相続人の子(例えば孫)や配偶者などへの贈与であれば、死亡前3年以内の贈与であっても生前贈与加算の対象とはなりません。また、いくつかの贈与税の非課税規定(住宅取得等資金贈与や教育資金贈与等)についても生前贈与加算の対象外となります。

※【税制改正あり】2024年1月1日以降に行われた贈与については、生前贈与加算の対象期間が従来の3年ではなく7年となりました。詳細は「生前贈与加算3年⇒7年へ」の記事を参照ください。

相続税の基礎控除額とは

相続税の課税価格から基礎控除額を差し引いた金額に対して相続税は課税されます。よって、相続税の課税価格が基礎控除額以下であれば、相続税は発生せず、原則申告義務はありません。基礎控除額は、「3000万円+600万円×法定相続人の数」で求められます。
法定相続人が、嫁・長男・次男・長女の場合、「3000万円×600万円×4人=5,400万円」が基礎控除額となります。

相続税の計算方法について

相続税の税額を求めるためには、まず相続税の総額を計算します。そして、相続税の総額の計算方法を知っておけば、必要最低限の知識はあると判断していいと思います。相続税の総額は、課税価格の合計額から基礎控除額を差し引いた「課税遺産総額」を法定相続人が法定相続分で取得したものとして、各人について次の税率・控除額を用いて算出した「算出税額」を合計したものとなります。

法定相続分に応じた取得金額税率控除額(万円)
1,000万円以下10%
1,000万円超3,000万円以下15%50
3,000万円超5,000万円以下20%200
5,000万円超1億円以下30%700
1億円超2億円以下40%1,700
2億円超3億円以下45%2,700
3億円超6億円以下50%4,200
6億円超55%7,200

9000万円の課税遺産総額に対し、法定相続人が嫁・長男・長女の場合、相続税の総額は下記となります。

  • 嫁の算出税額:4500万円×20%▲200万円=700万円
  • 長男・長女の算出税額:2250万円×15%▲50=287.5万円
  • 相続税の総額:①+②×2人=1,275万円
  • 実際の相続税額は上記相続税の総額を使って、「各人の実際の相続税額=相続税の総額×(各相続人の課税価格/課税価格の合計額」で求めます。課税価格が大きい相続人ほど、実際の相続税額は大きくなるのが分かります。