相続登記の義務化とは?

相続登記とは?

亡くなった方が所有していた土地・建物の名義を、不動産を取得された方へ変更する手続きのことを「相続登記」と呼びます。

相続登記が義務になる!

令和3年4月21日に民法および不動産登記法が改正されたことにより、従来義務ではなかった相続登記が義務化されることが決定いたしました。

2.相続登記が義務化されたのはどうして?

所有者不明土地の増加

相続登記が義務化されたことの背景として、「所有者不明土地の増加」があります。

「所有者不明土地」とは、相続が発生してもその登記がされないことなどによって、不動産登記簿により土地の所有者がすぐに分からず、分かっても連絡が取れない状態の土地のことです。例えば、亡くなった方が所有者のままになっていたり、既に住所変更をしていて所有者と連絡がつかなくなっていたりする状態です。

所有者不明土地が増加することによる問題

「所有者不明土地」が増加した結果、土地が管理がされないことによって周辺環境が悪化する、公共事業や復旧・復興事業が進められない、土地の売買をしたくてもできない、といった問題が発生しています。

これ以上所有者不明土地を増やさないために

この「所有者不明土地」の割合が、令和2年国土交通省の調査によれば、全国の土地のうち24%を占めているというのです。

これ以上所有者不明土地を増やさないための施策の1つとして、相続登記が義務化されました。

相続登記の義務化はいつから?

2024年(令和6年)4月1日から相続登記が義務化されます。

相続登記の義務化の具体的な内容

具体的には、下記のような内容となっています。(改正後の不動産登記法第76条の2、同第76条の3)

  • 相続(相続人に対する遺贈も含む。)によって不動産を取得した人

→自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、当該所有権を取得したことを知った日から3年以内に登記をしなければならない。

  • 相続登記(※1)又は相続人である旨の申出(※2)の後に遺産分割が成立した場合に、遺産分割によって不動産を取得した人

→遺産分割が成立した日から3年以内に登記をしなければならない。

(※1「相続」による法定相続分に応じた相続登記がされている場合に限る)(※2下記で詳しく解説)

もし相続登記をしなかったら?

期間内に登記していない場合、過料の対象に!

正当な理由なく上述の「3年以内」に登記を行わず、義務に違反した場合は、10万円以下の過料の対象となります。(改正不動産登記法第164条第1項)

「過料」とは、違反者に金銭的負担を課す行政上の秩序罰ではあって、いわゆる刑事罰ではありません。そのため刑事罰で言われるところのいわゆる「前科」は付きません。

正当な理由があれば、義務は免れる?

相続登記をしていないことについて、「正当な理由」がある場合には、義務違反とはなりません。例えば、相続人が極めて多数に上り、戸籍謄本等の資料収集や他の相続人の把握に多くの時間を要するケースなどです。

義務違反とならない具体的な事例については、下記の「相続登記の義務違反で過料?!過料が課されない「正当な理由」とは」の記事をご参照ください。

施行日よりも前に相続が発生していた場合

なお、2024年(令和6年)4月1日より前に相続が発生していた場合にも義務化の対象となります。ただし、施行日から3年が猶予されますので、最も早い人で、2027(令和9年)3月31日までに登記申請を行う必要があります。(民法等の一部を改正する法律附則第5条第6項)

相続人申告登記

期間内に登記ができない場合

相続登記をしたくてもできない事情がある場合、前述の「正当な理由」に該当するかどうかは、最終的には法務局の判断となるところです。義務を履行しないままでいることは「いつか過料になるかもしれない」という不安を抱えることになります。

そのため、一時的に「私はこの人の相続人です」ということを登記した人は義務を果たしたとみなしますよ、と救済してくれる仕組みが「相続人申告登記」です。こちらも施行日は2024年(令和6年)4月1日です。

具体的には、申請義務者が、期間内に、①登記簿上の所有者について、相続が開始した旨、②自らがその相続人である旨を登記官に申出ることで、義務を履行したとみなされます。(改正不動産登記法第76条の3第1項、第2項)

相続人申告登記はあくまでも「仮」の手続き

「相続人申告登記」は、相続人一人ひとりが単独ですることができ、申出を行った相続人のみが義務を免れます。ただし、これはあくまでも義務を果たすための一時的な手続きであり、所有権を取得するためには従来通りの「相続登記」が必要となります。

まとめ

「相続登記」をしないまま放置していると、過料が課される可能性があるだけではありません。時間が経てば経つほど、登記がされる前に所有権を受け継いだ相続人がお亡くなりになり、またその相続人がお亡くなりになり、と相続が発生するごとに相続人の数が雪だるま式に増えていきます。まずは相続人が誰かという調査の段階、戸籍の収集から膨大な時間、手間、コストがかかります。

さらに「誰が相続するか」決めるには、原則として「すべての相続人」からの同意が必要です。「すべての相続人」には、一度もあったことが無い遠い親戚や、場合によっては知らされていなかった異母兄弟が含まれているかもしれません。「すべての相続人」から同意を得ることは、相続人の数が増えれば増えるほど、困難になっていきます。その相続人の中に、連絡が取れない方、海外在住の方がいらっしゃる場合は、さらに時間がかかります。1つの相続登記が完了するまで2~3年掛かるケースもございます。

思い立ったが吉日、法律の施行日を待たず、今すぐ動き出しましょう。相続登記でお悩みの場合は、まずは登記の専門家「司法書士」へご相談ください。

相続に特化した専門家集団「札幌相続相談室Giraffe(ジラフ)」は、札幌を拠点として活動している、税理士・司法書士が中心となって運営している相談室です。「相続」でお困りのことがあれば、お気軽にご相談ください。